全力疾走日記

喪女でオタクで腐女子というトリプルコンボを決めた女が感想とか日々のあれこれをかくよ

食べ物の写真を撮るとめっちゃ不味そうだと言われる

女子って食べ物の写真撮るの好きですよね。私も好きです。おいしかった思い出は残しておいて、あとから見返して幸せな気持ちに浸るの大好きです。

なのですが、よく「喪女ちゃんの撮る写真ってクソ不味そうだよねwww」と言われます。私自身は美味しそうに撮ってるつもりなので、言われたときは滅茶苦茶心外でありました。そんなこと言うならアータ達はどうなのよ!?とブーたれて他の子の画像を見たんですよね。

 

滅茶苦茶シャレオツだった…

 

なんか、こう、レトロチックな加工してあったり…構図がこだわってたり…空気感が違うんですよね。プロかよ!?みたいな写真をネットにあげてたりするわけですよ。

自分の撮ってきた写真が残飯に見えた…

女子力チキンレースで私は負けたのだ…

いや、そもそも土俵が違った。

だって私は喪女。オタクの喪女なんだから。

 

そんな悲しみを込めて、私の食写真集を実際に言われたコメントを交えてお送りしていこうと思います。(ちなみにどんなに写りが悪かろうと味は美味しいものばかりです)

 

 





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「写真がデブ。不味そう」

デデデ、デブちゃうわ!肉が好きだからチャーシュー麺食ってるだけだわ!完飲伏せ丼とかやったことないからね!?

ねえ、なにが?なにが不味そうなの?こんなに油のテカりとか肉とかダイナミックに写してるつもりなのに何が不味そうなの?


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「色が不味そう」

確かにな、確かに私もそう思うよ。でもね、言い訳させて?

「てか肉でかくない???」

うるせえーーーー!!!私はステーキをおかずに焼き肉食う女だぞ!忘れもしないあれは修学旅行の晩ご飯の時だったーーーー大部屋のみんながおなかいっぱいだとたくさん残した肉をもったいないと思ってひたすら食べ続けた夜……みんなは飽きてトランプを始めたときも私は肉だけを見つめてひたすらしゃぶしゃぶし続けてたあの青春の夜……そう、そこから私のあだ名は「肉女」になった。


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「メロンぼけてるんだけどwww」

迫力のある構図を出したかった。それ以上語ることはない。




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「なにこれ?不味そう」

私にも思い出せないけどなんか野菜オーガニックレストラン的なところだったと思う。そろそろセットのように不味そうって言うのやめて。




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「比較的美味しそう」

コメント雑になってない?わかるよ、この写真が若干ブレてるの。でもね、言い訳させてもらうと、手ぶれっていうのも写真の味だと思う。手ぶれって撮ってる人が生きてる証だよね(深いことを言ったような顔)

 

 


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「なんかババくさくない?」

蕎麦でどうやって華やかに撮れと!?蕎麦をパスタのように撮るなんて邪道だ!

ちなみにこれは年越しのときにバイト先近くのそば屋で食べたかしわ蕎麦です。懐かしい。こうやって食べたときのことを思い出せるから食べ物の写真撮るの好きなんですよね。

 


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「これはない。私だったらSNSにあげるのためらうレベル」

これについては私もなんであげたのかなって思った。奥にゴミ落ちてるしね。誰だよこんな残飯みたいな写真公衆の面前にさらしたやつ~~?

 

私だよ。

 

多分食材が(見えないだろうけど)アワビだったから嬉しくてあげたんだと思う。初めて食べたアワビはコリコリしてて、バターの香りが広がって、噛むとアワビ汁が出てきて高級食材ってすごいなと思った。この日からアワビが好物リストに入った。

 


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「なんで半分しか写してないの?」

いや、構図に遊びを持たせてお洒落に見えるかなって…そういう…悪あがき……



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「不味そ~~~www」

これは個人的に美味しそうに撮れたと思ってた!みて?この宝石のようなフルーツ達の艶めきを!私やればできるじゃん。

ちなみにデカすぎて完食できなかった。



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「色が不味そう」

加工すれば?というアドバイスを真に受けて頑張って加工してみた結果がこれだよ!!

え~~でも、個人的にはシャレオツに加工できたと思ったんだけどな~~アレレ~(コナン声)


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「おっさんかよwww」

うん、まあ、これについてはね、まあ、そういう意見があっても否定はしませんよ?でもね、女子だってつけ麺食べたいでしょ?ちなみに出汁きいててめっちゃ美味しかったよ。それともあれなの?リア充の女子って霞かパンケーキかスタバのフラペチーノしか口にしない生き物なの?

 


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「なんのパスタ?盛り付け方汚くない?」

盛り付け方については私関係なくない!?無罪だよね!?私の写真の腕によって盛り付け方が汚く見えるとかいうそういう意味か!?

ちなみにトマトパスタに見えるかもしれんけど、ウニソースのパスタです。

 


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「これなに」

どっからどう見ても愛情たっぷりチーズハンバーグとクリームスープだろうが!!!!!(ただし自分用)

私的にはこの手料理写真をアップして女子力アピールしたつもりなんだけどなにも響かなかったようです。まず男の知り合い少ない時点でどこ向けのアピールなんだよって感じですけどね。

 

以上です。

具体的にどこが不味そうなのか誰も教えてくれないので、恥をしのんでネットに公開してみました。どなたか写真撮るのがうまい方、ご教授いただけると嬉しいです。

もうこれ以上まずそうっていうコメントは見たくないです。お願いします。絶対に不味そうってコメントはやめろよ!絶対だからな!私は褒められると伸びるタイプですからね!!

 

なんだか改めて自分の写真を見直してみて、メニュー自体が確実に女子力あげるつもりなさそうなラインナップだなって思いました。これまだおしゃれな方で、あとは牛タンとか焼き鳥とか白子ポン酢とか居酒屋メニューばっかりですからね。

好きなもの食べつつ女子力アピールもできるいい方法ないかなーと思うこの頃でした。

うたわれるもの偽りの仮面【アニメ感想】

うたわれるもの偽りの仮面が終わってしまった。今期、僕だけがいない街と同じくらい推していた作品なので喪失感がすごいです。

切ない最後でした。

ぶっちゃけ前半は日常パートがあまりにもグダグダしていたので辟易していた面もあったのですが、後半の戦パートはとても好きでした。

八柱将人外すぎない!?とかやっぱりトゥスクルは強かった!(喜)とか。前期のキャラクターがますます好きになりました。あれだけバケモノじみた力を持つムネチカと渡り合って勝つベナウィ人外か…(人間ではないけど)

人外といえばヴライとオシュトルの決戦がゴジラVSメカゴジラみたいでちょっと笑いました。恐竜大決戦かよ!?あれだけ暴れまくってよく帝都無事だったなとか民の心配してる割には遠慮なく暴れてるなとかヤマトの民の心配をしてしまいました。ヴライがただの脳筋じゃなく、野心溢れる脳筋だったのは意外でした。いや、なんか一人だけ世紀末に生きてそうだったし……権力とか興味ないかなって……

まあ、でもヴライの言うことも一理あったと思うんですよね。力がなきゃ国も民も守れないしね。税金とか兵とか民によって成り立ってるから民をないがしろにしている発言はやっぱり脳筋だなあと思いました。

最終回は無音の演出が印象的でした。

ハクが水車を直した始まりの街で、台帳に一人分の名前しか書かないクオンを見て、ハクとクオンは離ればなれになったことを察しました。

それからの回想でのクオンの無音演出で「ハクは?」と文字がでる場面があるのですが、最初何故こんな演出にしたのか解らなかった。けど、藤原さんの声でオシュトルが「ハクは死んだ」と言ったとき、オシュトルが死んでハクがオシュトルになったのだということが一層印象づけられた演出になりました。ここの演出とても不穏で切なくて好きで、なんども見直しました。

 

タイトルの偽りの仮面ってアクルカのことだと思っていたのですが(アイスマンの仮面の複製だから)、「オシュトル」になったハクのことでもあるダブルミーニングだったんですね。

オシュトルの最期はズルかったです。「頼んだぜ、アンちゃん」って急にウコンのくだけた口調になって。ウコンの方が素だったのかな。

 

「我が名はーーー」って言って一期のOPに入るのすごい良かったです。オシュトルとして生きていくことを決意したハクの覚悟が現れている感じがして。クオンが去るとき、「自分はここだ」と言って、まだ迷いがあったと思うんですよ。それをあの演説の場でハクという名前を完全に捨て去ったんだなあと感じました。

 

帝と姫暗殺犯は誰なのか、ハクはなんでスライムにならずに生きていたのか謎が残りましたね。あと、ヤマトに惨敗したウズールッシャはどう出てくるのか、ヤマトの内部紛争はどうなるのか、色々気になるところがあります。三期で明かしてくれるのでしょうか。

二期は一期に比べて、元々完成されていた国、ヤマトに関する話だったので、世界観に関する内容が薄めで、一期に比べると劣るかなあと思いますが、一期と三期の緩衝材役なのかなあとも思います。一期で明かされていなかったことを二期で言及して、二期で現れた謎を三期で回収するっていう筋なのかなあと。

二期は最終回がとにかく良かったので前半のグダグダは帳消しになりました。

 

三期予告で、クオンがベナウィとクロウを従えてたっぽいので、もしかしたらヤマトとトゥスクルが戦争になるかもしれないですよね…辛い…。

副題の二人の白皇が何を意味するかも気になるところです。ハクオロ様蘇っちゃうの!?とか二期で出てこなかったけどエルルゥは出てくんの!?仮面の真実って結局なんやねんとか。でもヤマトサイド、トゥスクルサイドをやるにしても主人公はハクだろうなあと思います。唯一人間を元の姿に戻せるかもしれないし、それを帝から託されたわけですしね。あとメインビジュアルの真ん中にいるしな!これは主人公だろ!

ちなみにうたわれるもの二人の白皇は2016/09/21発売です。楽しみですね!(ダイマ)

ポーの一族【原案】ドラマ化

Twitterやネットニュースで知ったのですが、萩尾望都の名作、「ポーの一族」を原案にして3月からドラマが始まるらしいですね。ちょっと思うところがあるので書いてゆこうと思います。

www.tv-asahi.co.jp

 

腐女子の中で萩尾望都が好きな人は多いと思います。私ももちろん萩尾望都が大好きで、勝手ながら著作をBLの聖典としてあがめ奉ってます。

中村明日美子「同級生」が青春BLの聖典なら、萩尾望都の「残酷な神が支配する」は共依存BLの聖典です。いくつ聖典あるんだよってかんじでありがたみもクソもありませんが、オタクは多神教なので問題ないです。神の数だけ聖典がある。萌えの数だけホモもあるのです。

 

(同級生の記事も書いたのでお時間があれば読んでね)

sou711.hatenablog.com

 

 

ポーの一族」というのは、BL界の基礎を作った作品だと思います。この後に、「風と木の詩」が生まれ、少女漫画界に男性の同性愛描写が流行するようになるからです。

BLのことを薔薇といいますが、なぜ薔薇というかご存じでしょうか。私も最近知ったのですが、ポーの一族が由来だそうです。ポーの一族の作中で、バンパネラは薔薇の精気と血で生きている描写があり、ポーの村には薔薇園や薔薇でできた食事が出てきます。薔薇がキーワードであり、そこから少年愛が好きな人のことを「薔薇族」と呼ぶようになり、今では広くBLのことを薔薇と言うようになったそうです。

なので、ポーの一族に思い入れのある腐女子は多いです。ネットの反応は拒絶から戦々恐々の様子見まで様々でした。

 

私が引っかかりを覚えているのは、”原案”という言葉についてです。

ニュースを見る限り、バンパネラという設定以外は使っていないようなのに、どうしてわざわざ原案と書いたのでしょうか。キャスティングもストーリーも全く意識していないですよね。

吸血鬼自体は萩尾望都の作った設定じゃないし(それだとウィンタビューウィズバンパイアもパクリということになってしまう)

原案ってぼかすことで、原作ではないから忠実に作らなくても叩かれないし萩尾望都のパクリと言われてもかわすことができるから、アンチ避けなのかなってあらすじ読んだだけでは思いました。

萩尾望都は永遠の少年を書きたいといって「ポーの一族」を書いたし、実際大人になれない葛藤と孤独が魅力な作品でもあるので、そういういいところを取り入れてほしかったなあと思います。

 

 

 

 

いや、ごめん綺麗事いったけど、ぶっちゃけ大人だと萌えない。永遠のショタだからいいんだよ!!!!最愛の妹を失った悲しみから友人を同族にして寄りかかるところが萌えるんです~~!

ハッ……もしかしたら見た目は香取慎吾(39)でも中身はかとりしんご(14)という設定なのかもしれない……わ、私は大変なことに気がついてしまったかもしれない。

 

 

あとタイトルなんとかしてよ!ストレンジャー(よそ者)って安直すぎんだろ!どうせバンパネラだからニンゲンには溶け込めずよそ者とか、時代をさまよい続けているから一定の場所にいれずよそ者とかそういうことなんだろ!?ふんだっ!解ってるんだからっ!!

そして激おこぷんぷん丸なのが、

~バケモノが事件をあばく~←これ要る???????????????

バケモノが事件をあばくってもう時間ないから仮題ヤケクソでつけただろ!確かにめっちゃコンセプトが解りやすくて、その点副題としていいのかもしれないけど、オリエント急行殺人事件~ポワロが事件をあばく~位ダサいよ。いや、解ってるから!サスペンスって言っている以上探偵役がいること解りきってるから!いいんだって余計なこと言わなくて!そんな気持ちにさせられた。なぜなのか。

確かに人間にとっては敵でバケモノかもしれんけど、「ポーの一族」の中では永遠に縛られた悲しい生き物なんだよ!薔薇を食べてひっそりと暮らす美しい生き物なの!例えるならアイドルの体臭はフローラルみたいなもんなの!バケモノって一言で片付けるのは簡単だけど他になかったんだろうか。バケモノっていわれると一気に妖怪人間ベムとか楳図かずおの漫画に出てきそうになるんだけど。楳図かずおの漫画も大好きだけどね、ジャンルが違うと言いたいのよ。

 

ぐちぐち垂れ流したけど、これはうるさいオタクの性分みたいなもんで。原案と書いてある以上萩尾望都はGOサイン出したんだろうし、とりあえず楽しもうと思います。

 

 BL好きだけど萩尾望都読んだことがない人はこれを機に読んでもらえると嬉しい(ダイレクトマーケティング)↓↓

ポーの一族 文庫版 コミック 全3巻完結セット (小学館文庫)

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【感想】つまをめとらば/青山文平 このブロマンスがすごい!2016

ブロマンスって言葉をご存知だろうか。

ブロマンス(Bromance)とは、2人もしくはそれ以上の人数の男性同士の近しい関係のこと。性的な関わりはなく、ホモソーシャルな親密さの一種である[1]。Wikipediaから引用

つまり男同士の熱い友情な訳だが、腐女子は大変こういうものが好きだ。友情と恋愛感情は別だと解ってるんだけど、(腐女子自身も友達に恋をしない人の方が多いし)なんか萌えちゃうんだよね。
多分、男同士の友情って女にはどうしても分からない領域のことだから、特別に感じるんだと思う。少年マンガの親友と書いてライバルと読む関係性がとてもキラキラしているように見えるのだ。
男性が思う女子同士のお風呂事情みたいな。(よくアニメでバストくらべあいっことかみるが、バストについては気を使って何も言わなかったりする)
ともかく!腐女子以外がこのブログをみにきているかは謎だけど、ブロマンスは腐女子の憧れなのです。

まあ、一口に腐女子と言っても野生のポケモンのごとく色々タイプがいるわけで。なんでもBLに変換して(画鋲×壁とか)口に入れるタイプもいれば、偏食家もいる。二次創作にしか萌えない人もいるし、一次創作が好きな人もいる。

私はBL的な意味合いではなく、ブロマンスが好きです。ぶっちゃけ男同士の友情に夢を見ちゃってる人です。アイドルはトイレいかないもん><と同等くらい夢見てます。だから、これから語る感想もオイオイ現実は違うぜ!と思っても全て夢を見ている私の妄想だとご理解いただきたいです。夢ぐらい見させてくれ。

長い前置きになってしまいましたが、今回腐女子腐女子じゃない問わず紹介したいのが、今年直木賞を取った「つまをめとらば」です。
ジャンルは時代小説で、短編集という形になっています。
つまをめとらばというタイトルから連想するのは文字通り妻と夫でしょう。実際この本の内容は妻と夫に関わる話ばかりだ。しかし、表題作の妻をめとらばは違う。
江戸時代の隠居した武士二人の話である。

山脇貞次郎と堀川省吾は幼なじみだ。しかし、ここ十年は疎遠だったので、二人はお互いのことをよく知らないまま偶然再会する。ひょんなことで堀川は山脇に家を貸すことになる。なんでも、世帯を持ちたいからだそうだ。

ここまでが冒頭で私の中ではすでに熾火のごとく萌えが燃え始めていた。え!?もう!?ってかんじかもしれないが、幼なじみってワードは大好物です。ありがてぇ…ありがてぇ…。
世の中のラブコメものも幼なじみがヒロインとしていることが多いと思います。それは幼なじみという属性がみんな大好きだし、あこがれがあるからだからだと思う。実は平安時代からある属性だったりする。*1男の幼なじみだとライバル性が強いですよね。ポケモンのレッドとグリーンとか。そんなわけで、もれなく私も大好きです。

しかもただの幼なじみじゃない。省吾は昔貞次郎を虐めていた。しかし、成長してからは、勝てなくなってしまった。そこで仕返しにくるのろ覚悟していた省吾だったが、貞次郎は態度を変えず、省吾が剣道で勝ったら「やっぱり省ちゃんは強いなあ」というのだ。

めっちゃ萌えませんか!?

省吾はこの貞次郎からの赦しを借りだと思ってるんですよ。「やっぱり省ちゃんは強いなあ」という一言で、身体的にも精神的にも負けたと思ったのだ。子供の頃のことをずっと覚えていて、借りだと考えている。一方貞次郎はなにも気にしていない。お互いの関係を対等だと思っている。こういう対等に見えて実はコンプレックスを持っているとか、アンバランスな関係がすごく萌える。

かくして、一緒に暮らし始めた二人。しかし、一向に『妻』は姿を現さない。
そして、貞次郎が算学の師範ということを始めて知る。

「俺はおまえのことをなにも知らなかった、ということだな」
目の前の貞次郎は、並べ替えられた本の山のようだった。以前と同じようでいて、まったく変わっている。
「お互いさまだ」
省吾に顔を向けて、貞次郎は言った。
「俺も、おまえのことをなにも知らん」
そして、つづけた。
「おまえが俺を知らん以上に、俺はおまえを知らん。いま、なにをしているのか、なんでそういう仕儀に至ったのか。俺はいまそれを語ったが、おまえはまだなにも語っておらん」

幼なじみで、一見近いように見えて、実は遠い存在だということがわかる。偶然であって、お互いを知ることからまた友人関係がはじまる。運命的だ。
そう言われて省吾は自分のことを語り始めた。今まで娶った三人の妻のことを。


それからひと月経っても貞次郎が世帯をもとうと思っている女が現れることがなかった。しかし、省吾は女を心待ちにしていなかった。

自分がなにを好むかは、ほんとうに好むものと出逢って初めて分かる。省吾も、ほんとうの平穏を知って、それが自分にとってなにより大事と気づいたのだった。そして、その最も大事なものを得るためには、貞次郎という相方が要ることにも気づいた。
(中略)
男と暮らすということは、こんなにも平らかで、穏やかなのかと思った。
むろん、男ならば誰でもいいはずもない。しかし、穏やかな暮らしを共に送るための最良の男と、穏やかな暮らしを共に送るための最良の女のどちらかを選ぶとすれば、自分はまちがいなく、最良の男のほうを選ぶだろうと思った。

ここの文章とてつもなくブロマンスが凝縮されていると思いませんか?
妻といるときの省吾は平穏とは無縁だった。省吾が争いを好まないため、妻に合わせてきたからです。結婚したならば、どちらかが、あるいはどちらもが譲歩しなけらば成り立たないからです。けれど、今まで結婚してきた女達は「自分が一番正しい」という信念をもった女達だった。それに比べて気の置けない友人というのは、好き勝手言い合える。やはり同性と異性では態度が変わってしまう。異性の前では自分を取り繕ってしまう。(自然体でいれる男女もいるのかもしれないけれど)
え?え?なにこれ同人誌???(表紙二度見)な、な、直木賞だ~~~~~!やったね公式でした!ってかんじ。
ぶっちゃけこの時代特有の衆道文化の話にも少し触れて、省吾も違和感はないと思う。しかし、その後で男を連れ合いとして好きになるのは無理だときっぱりという。なんとなくその気持ちは私にも解る。恋愛に等しい友情ってあるよなあっていう話。私も思春期の頃、大好きな友人と共にいたら、いつまでもこのままでいたいと思ったものです。友人に嫉妬したり、疑似恋愛のような感情を抱く人は少なからずいると思う。
省吾も貞次郎も相手に自分を投影してる部分があるのかもしれないと思った。


そして、最後のたたみかけが最高に萌えるポイントである。すこし長いが、抜粋するので是非噛みしめてほしい。

「おまえんとこの塩梅はどんな具合だ」
「梅一斗につき、塩二升五合といったところだ」
「少し甘いな」
「そうでもあるまい」
「それでは日持ちがせんだろう」
梅の話はまだつづいた。
「三度の夏は越えられんぞ」
「越えられんか」
さすがに、それはない。
「ああ」
「味噌はどうだった」
潮時だと、省吾は思った。
「おまえはどうだった」
貞次郎はまだぐずった。
「俺の口には合わなかった」
「俺もだ」
(中略)
「算学の話はどうだ。しなかったのか」
「した」
すっと、貞次郎は答えた。
「したが、少しだけだ。俺は算学の話を少しではなくしたかったが、すぐに味噌の話に戻った。この界隈で、他に買っていただけどうな処の心当たりはございませんでしょうか、ときかれた」
「そうか」
「たいしたものだな」
空を見上げて、貞次郎は言った。
「ああ、たいしたものだ」
「どうやっても、かなわんな」
「ああ、かなわん」
「省吾」
意を決したように、貞次郎は名前を呼んだ。
「ああ」
「俺はここを出ていくことにしたよ」
「そうか」
その日は梅雨の晴れ間で、空が抜けるように青かった。
「やはり、あの煮豆屋の女と一緒に暮らすことにした」
「踏ん切り、ついたか」
「ああ、佐世と会って踏ん切りがついた。張り合っても歯が立たん。俺は女に頼ることにする。やはり、女に死に水をとってもらう」
「決めたのなら、是非もない」
「ここで女と暮らしてもよいかと思ったのだがな。ここだと、未練が残る」
「なんの未練だ」
「一度は爺二人でずっと暮らしていこうと思った未練だ。せっかく踏ん切ったのに、またずるずると尾を引きそうな気がする」
「そうかもしれん」
「おまえはどうする」
「さあ、どうするかな」

なんでもない会話を交わすことで、迷いが読み取れる。このまま平穏で停滞した時をすごすか、女とすごすか。結局貞次郎は平穏より女を選んだ。省吾の顔を見て、煮豆屋の女を見初めた自分の目に狂いはないと知ったし、佐世との再会を経て、女は強いということを知り、「踏ん切り」がついたのだろう。
貞次郎曰く、男だけで暮らしてゆくのは「気概も力も足りない」から暮らしていけないのだという。平穏は停滞だと思う。だから、戯作や算術の源であった「毒」が薄れていったのだと思う。このまま二人で暮らしていったら、生ける屍のようになっていたのかもしれない。
多分、女と暮らすことに決めた貞次郎は二度と省吾のところには戻ってこないのだろう。戯作をやめてもいいか、このままの平穏でいいかと思っていた省吾は、貞次郎が出て行くことを受け入れたが、そのとき何を思ったのだろうか。また、もとの静謐すぎる孤独にもどるのだろうか。それを考えると切ない。
友情は恋愛の前では敗れてしまうという切なさがたまらなかった。


この本に赤ペンとマーカーで受験前の参考書のごとく萌えポイントを書き込みして誰彼かまわずプレゼントしたいです。

今回はブロマンスに萌えたから色んな人におすすめしたい!という気持ちでこの記事を書いたので、表題作に触れるだけで留めるけど、他の作品も味があって面白いのでこの本自体をダイレクトマーケティングしておきます。
未読の人は是非妻をめとらばだけでも読んでほしい。そして私とブロマンスの世界に浸ろう。

つまをめとらば

つまをめとらば

*1:伊勢物語の筒井筒

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